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預金口座へのマイナンバー付番と窓口対応

2018年1月年初から預金へのマイナンバー(個人番号)の付番が始まる。付番は「当面、義務化されていない」任意の扱いなので、銀行窓口でマイナンバーを求められても税法を含めた関係法(国民年金法・国税通則法・預金保険法等)違反にはならないものの、実際には新規口座開設の場合はマイナンバーの提出がほぼ義務付けられるのではないかとみられている。既存口座についても政府は預金者への連絡を要請しており、預金の満期日が到来したときなど、銀行との接触があるときは、銀行は預金者にマイナンバーの提出を求めることとなる。マイナンバーの付番状況が芳しくないときは、政府は「3年後に付番促進の法律改正を行う」とされている。果たして順調に付番は進むのだろうか。

◎預金保険法の圧力が気になる

 

 来年、新年から銀行窓口にいき預金の新規口座を開設しようとすると、かならず、テラーから「マイナンバーの提出をお願いします」と告げられることになります。預金者は義務なのかそれとも任意なのかわからないまま、おそらくマイナンバーを書面に記入することになるでしょう。制度上はあくまで任意なので、記入しなくともよいことになっています。しかし、制度上、「付番の依頼」をすることになっているため、銀行窓口ではほぼ絶対といっていいほど、預金者は銀行から要請されます。要請を断る勇気は預金者にはないかと思われます。したがって、新規預金口座は事実上、マイナンバーが付番されていくでしょう。
 次に既存口座預金についてですが、これまた銀行は機会があるたびに預金者にマイナンバー記入を要請するはずです。
 銀行側は国税通則法を意識しているわけではありません。気分としては預金者への国税・地方税の徴税に協力するつもりもないでしょう。預金者にすこしでも抵抗感があれば、「それでは結構です」と付番をスキップするかもしれません。
 ところが、銀行側には預金保険機構という別の権力からのにらみが効いています。預金保険の対象となる預金についてマイナンバーの付番が要請されているからです。預金保険事故の際、名寄せを行いスムーズに預金保険の払い出しをおこなうためにもマイナンバーがあれば、きわめて簡単に行えます。預金保険機構は銀行に対して、マイナンバーの記入を要請しています。となると、どうなるか。そうです、やはり窓口では記入への圧力がかかることになります。預金保険機構は国税当局とは別種の圧力がかかります。国税には調査・査察がありますが、口座の名義には特定のケースを除けば関心は薄いでしょう。しかし、預金保険機構は口座名寄せを根拠に検査を入れる権限を持っています。実際、一定期間ごとに検査を入れています。これが銀行側にしてみればうっとうしい(失礼!)わけです。ならば、とくかくマイナンバーを要請しておこうという気分になります。
 なお、実際に銀行が破たんしたときにはマイナンバーがなくとも保険金はおりますのでご安心ください。マイナンバーがあればスムーズだということにすぎませんので、預金者の権利がはく奪されるようなことはありません。

 

◎銀行窓口での混乱があるか?

 

 さて、預金者への要請と書きましたが、これが実際にどれだけ銀行窓口の負担になるのか、まだはっきりしていません。まず、テラーはマイナンバー制度の説明をしなければなりません。制度の説明なしに、「とにかくここに記入してください」と対応すれば、事後的にその行為はその銀行、またはテラーはマイナンバー法違反になります。ペナルティがあります。おろそかに対応はできないのです。となると、どうなるか。そうです時間がかかるのです。ただでさえ、マイナンバーについて徴税の捕捉に使われるのではないかと思っている人が多い(?)なかで、納得を得ることは大変です。ましてや、既存口座へのマイナンバー付番となると気が遠くなる作業です。ひと昔は飼い猫などのペットの名前がついている仮名預金が問題になっていましたが、いまでも残っているかもしれません。(ないかもしれません)
 
◎外貨預金への預金シフト

 

 証券口座についてはすべて義務として支払調書を出すため、付番されています。抵抗感が少ないのでしょう。所詮、金融資産の一部なのですべてが把握されるとは考えていないためなのかどうか、資産家の方々に聞かないとよくわかりません。ただ、NISA口座騒動でマイナンバーの付番が進捗していない現状もあり、長期の貯蓄性の商品については、投資家も警戒している節が伺われます。いずれ、金融商品の総合課税が実現されれば、自動的にマイナンバーが付番されていくとおもわれます。
 では、どうしてもマイナンバーの提出、記入は嫌だという方はどうするのか。簡明な方法として、預金保険の対象外の外貨預金や外国銀行の支店に預金するという方法があります。すでに低利の円預金に見切りをつけている方々も多いでしょう。データとしても外貨預金の伸びが高まっています。外貨のほうがリターンを取れる可能性が高いということでリスクを取りに行っている方が多くなっています。年明けから外貨預金が増えるかもしれません。これがパニック的に拡大するといわゆるキャピタルフライトです。
 コラムの本題とは関係がなくなりますが、キャピタルフライトが起こると猛烈な円安になります。株価も下落します(円安が株高とお考えの方は間違っています)。資産価格も下落します。金融政策が効かなくなります。まさかとは思いますが、マイナンバーがキャピタルフライトのきっかけになるなんてないとは思いますが・・・。