· 

次期金融庁長官は遠藤監督局長の線も有力に

森金融庁長官の後任は氷見野金融国際審議官という見方が一般的だが、直近になって遠藤長官説がながれている。なぜか。

 週刊「東洋経済」の6月2日号に金融庁長官人事の予想、新長官に氷見野良三氏(金融国際審議官。昭和58年)が当確という趣旨の記事を掲載致しました。ところが、ここにきて遠藤俊英監督局長(57年)の昇格という線も濃厚という関係者の声が増えてきています。確定的な人事という誤った見方を読者に与えてしまったことを後悔しております。人事は下駄をはくまでわからないというのが現実です。直前に変更されたことも多々ありますので。(この点は何人もの当事者に確認したことがあります)少し前までの長官人事予想として読んで頂ければ幸いです。(イクスキューズにご寛恕を)

 氷見野説が揺らいだ理由は明らかではありませんが、スルガ銀行のかぼちゃの馬車事件が少なからず影響しているようです。ほかにも理由があるかもしれませんが、いまのところ不明です。いずれにせよ、遠藤、氷見野氏のどちらかが長官になることになりそうです(自分で書いていて断定せず、弱気の書き方になってしまったことに少し笑いがもれ、下腹部の小ささに驚いています)。

 金融庁では「監督局長から長官に就任する」という暗黙のルールが出来上がっていますが、森長官はそのルールを変えたいと話していたことがあります。しかも、氷見野金融国際審議官への圧倒的な信任があります。氷見野長官説は、この監督局長から長官というルールだけでなく、年次を飛ばすという、これまた慣例破りでもあります。氷見野氏の入省は58年なので遠藤監督局長よりも年次が下だからです。

 本来なら年次順に繰り下げて長官を決めていきますので、これまでの慣例に従えば、遠藤説が有力です。3年前に監督局長に就任したときの下馬評では次期金融庁長官の筆頭でした。氷見野氏はその次の長官でした。森長官はあえてこの年次慣例を打ち破ろうとしていた節があります。それは、金融庁の人事評価制度の見直しにもそうした考え方が展開されています。これらの慣例破りによる組織の活性化という目的にそった人事なら氷見野説が有力ということです。

 今年の人事のタイミングは国会の延長次第ですが、仮に2週間ほどの延長となれば、7月10日発令というスケジュールになります。まだ、時間がありますので、官邸・内閣人事局の判断が遠藤、氷見野氏のどちらに振れるか予断を許しません。

 遠藤、氷見野氏とも監督局のキャリアが豊富です。とくに金融行政が大きく変化することはないと思います。たとえば遠藤氏が長官になれば、オンサイトの検査が増えるとかといったことは考えにくいでしょう。また、氷見野氏の場合も同様です。森路線の一層の具体化を進めることでしょう。

 どちらかといえば、新組織となる金融庁の組織運営で濃淡が出るかもしれません。たとえば新設される総合政策局長、市場企画局長などの局長の起用方法に表れるはずです。どのような仕事を割り振るかは、長官の仕事です。また、財務局との関係も若干、違う可能性があります。遠藤氏の場合は、監督局長が長いということもあり、財務局職員との人脈が濃いからです。

 ひとつジンクスを付け加えるとすれば、これまで銀行1課長を経験した人は長官になっていないということがあります。ところが二人とも経験者です。ジンクスが破れることだけは間違いないようです。破れないとすれば、候補者はもう一人いますが・・・。

 

(6月12日追記。共同通信が10日付で遠藤金融庁長官説を報道しました)