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改組後の金融庁のモニタリング分担と運営体制

金融庁が7月に大幅な改組とそれに伴う人事異動を実施したが、新組織の具体的な運営方針にはまだ不明な点が多い。人事異動直後の7月の各金融団体との意見交換会の内容や8月初旬に開催された財務局長会議の様子から、その運営体制が見えてきた。

◎遠藤金融行政の骨格

 

 遠藤新長官の金融行政方針、いわば施政方針が就任以来の非公式、公式の会合で次第に明らかになりつつあります。基本ポイントは3つ。①金融行政の最終目標(経済の持続的発展と国民の厚生の増大)と中間目標(金融システムの安定と金融仲介機能の発揮)の再設定、②プリンシプルベースの行政の徹底、③金融機関経営の“見える化“。大枠は森前金融庁長官の路線を踏襲したものですが、遠藤長官のアクセントと理解の整理がなされています。

 

 目標再設定というと大げさに聞こえますが、「金融システムの安定」と「金融仲介機能の発揮」の「バランスを重視する」とのことです。バランスの重視というのは、いわば官庁用語で、要は「見直し」ということになります。金融システムの安定には、金融機関の収益力の強化・金利リスクのモニタリング、ビジネスモデルのチェックなどが含まれます。この1年間を振り返ると、こうした金融システムの安定につながるモニタリングに偏向してきたのではないかという反省が伺われます。遠藤長官の就任に民間金融機関の経営者が「ほっ」としたというのは、ここからも見えるのではないでしょうか。
 (②と③についてのコメントはここでは省略します。)
 
◎地域金融機関に対するモニタリング体制の変更

 

 メガバンク、保険、証券に対するモニタリング体制には大きな変化はないように見えます。大きく変化したのは地域金融機関へのモニタリング体制です。

 

 まず、第1に、モニタリング(オンサイトとオフサイト)の責任を新設の「総合政策局」に完全に移管したということです。モニタリングはもとより、政策立案、全体的な視点からの金融機関との対話方針は総合政策局が担うことになります。総合政策局長(佐々木清隆氏)のもとに置かれた総括審議官(中島淳一氏)は、もっぱら官房機能の所管という区分けとなり、総合政策局長がモニタリングの指揮を執ることになります。昨年の組織改革案作成時、総括審議官はモニタリングを担当することになっていましたが、実際の運用は変更されたようです。

 

 第2に、財務局の職掌を明確にしたことです。ここ数年(つまり森長官時代)、地域金融機関のモニタリングは金融庁が主体的に実施してきましたが、今後、特定のテーマ(プルーデンス、有価証券運用リスク管理、公的資金注入行の管理)以外は、「すべて」財務局が担当することになりました。つまり、第一義的には財務局が窓口になるということを決めたわけです。大きな運用の変化です。財務局長の責任も重くなります。

 

 第3は監督局の関与は、この財務局のバックアップとなります。監督局に新たに「地域金融生産性向上支援室」を設け、「地域金融機能の強化を通じた企業の生産性向上を支援するための政策の企画・立案・推進」するとしています。地域経済・企業の課題をタスクフォースの形で応援するというものです。監督局に監督機能は当然、ありますが、一歩を引いた感じです。