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通常貯金限度額撤廃はやはり自然消滅

郵政民営化委員会での通常貯金限度額撤廃の議論がまったく動いていない。6月に一定の方向を出そうとしていたものの、強硬な反対意見が続き、官邸側の調整も効かないまま、延長戦に突入。7月(持ち回り)、8月は委員会も開催されず、9月の委員会でも、日本郵政の決算説明に終始した。10月以降の開催スケジュールについては仮置きされたままで、撤廃論が議題になる雰囲気は全くない。長門社長の官邸詣でも7月まで目立ったが、そのあとはぷっつりと切れている。今年の春の限度額論議は、日本郵政の3年ごとの中期経営計画が公表される時期にあたっていたことから、熱を帯びた経緯があったが、このタイミングを外れた以上、政府としても動きようがなくなっている。加えて、野田聖子総務大臣が10月2日、内閣改造人事において総務大臣から降りたことも限度額論議沈静化の要因となるとみられている。

◎振替から通常貯金シフトで預金保険料負担増も

 

 通常貯金の限度額撤廃は6月に菅官房長官が事実上、延期の方針を明らかにしたことでジ・エンド。その経緯はこのコラムで6月に書いています。当時は年末までの延長とみられていましたが、このテーマを動かしていた当事者の一人であった野田総務大臣が退任したこともあり、「さらにトーンダウンする」(金融関係者)とみられます。日本郵政の幹部も「この問題は動かない」と語っており、長門社長以下、日本郵政側からこの問題を取り上げる雰囲気はありません。

 

 限度額撤廃は、郵便局経営にメリットがあるものの、グループ全体としてはマイナスのダメージしかありません。郵便局には年間6000億円の銀行代理店手数料が入ります。貯金を集めれば、集めるほどこの手数料が入ります。しかし、現状、その貯金の運用ができません。運用できない資金は日銀当座預金に流れ、その残高は50兆円を超えたままです。このうち10数兆円分についてマイナス0.1%の金利が適用され、30億円程度の金利を払っている状況です。

 

 30億円なんか気にするなと郵便局長さんたちが考えるのは、わかります。所詮、自分の懐ではなく、親会社の負担ですから。

 

 しかし、通常貯金の限度額撤廃は、預金保険料の支払いを増やす可能性があるということに留意しないといけません。むしろ必至と考えるべきでしょう。現在、ゆうちょ銀行は年間600億円程度の預金保険料を払っています。これが1割近く増える可能性があります。

 

 全額預金保険の対象となっている「振替貯金」は漸増を続けており、この6月末時点では15兆円を超えました。定額貯金からあふれた通常貯金もあふれ、付利金利ゼロのこの貯金にシフトし続けています。ちなみに6月末時点の各貯金残高は、定額貯金96.2兆円、定期貯金8.3兆円、そして流動性預金は、通常貯金が61兆円、そして振替貯金が15.1兆円となっています。

 

 仮に15兆円そっくり、通常貯金にシフトすると50億円近い保険料負担となります。普通の経営感覚ではそんなばかなことはしないはずです。しかし、通常貯金からもあふれているとなれば、通常貯金の預入上限が撤廃されると通常貯金にシフトする可能性があります。まして、現在の通常貯金金利は0.001%とゴミみたいな金利ですが、今後、金融政策次第で、多少なりとも上昇すればゼロ金利よりはましということでシフトするでしょう。

 

 預金保険料率は、「平成33年度末に責任準備金が5兆円程度になるように積み立てを行っていく」ことを当面の積立目標とし、逆算して料率を決めています。現在、預金保険機構には、預金保険の原資である準備金は3.6兆円、年間0.38兆円の保険料収入がありますので、なにも保険事故がなければ、この目標を軽くクリアできることになります。そこに、今後目標年度まで4年ありますから、50×4=200億円も、ゆうちょ銀行が貢献すれば、当然、預金保険料引き下げ要求が出てきても不思議ではありません。民間金融機関側にとっても、意外とプラス要因となるかもしれません。


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