キャリア採用苦戦と回転・ドア人事

平成30年度(2018年度。2019年4月採用)の霞が関のキャリア(総合職)の採用は極めて厳しいものとなった。全体の採用枠を余すだけでなく、行政の企画立案を担うキャリアの質が低下する懸念が生じている。それは東大卒の採用が大きく減少しているからだ。また、各省庁とも途中退職者が目立ち、必要人員の確保のため、退職したキャリアを再雇用する動きも本格化する気配がある。

◎東大卒キャリアは半減

 

 2018年度(この4月採用)の霞が関のキャリア・総合職国家公務員の採用予定は740人程度でしたが、最終的に採用したのは660人程度になったようです。採用数を確保できなかったことは、国家公務員が敬遠されたという証左です。

 

 加えて、今年は優秀な学生の確保ができなかったのが、もう一つの特徴となっています。キャリアは、予算案作成と行政執行だけでなく、法案作成という重要な実務を担っています。法律を作るという作業には、優秀な人材が欠かせません。そのため各省庁とも、東大法学部卒を採用することに必死です。
 
 ところが、このところ東大卒の確保ができなくなっています。2018年度の東大卒採用は全体の16.8%に止まりました。2010年度は32.5%でしたので、このわずか8年のうちに半分の水準に落ち込んだことになります。東大生の公務員への人気は劇的に下降しています。合格者(実際に採用した人数ではなく試験合格者)をみると、2018年度は329人。5年前は454人でしたので、3割近くも減っています。受検しないのです。なお、京都大学はほぼ変わっていません。理由は不明です。

 

 官邸への影響力を遺憾なく発揮している経産省の官庁訪問者数(試験合格者の企業訪問)は、例年800人程度だそうですが、今年は400人に満たなかったそうです。人気のありそうな省庁(本当のところはわかりません。官邸主導で経産省の本来の仕事を阻害しているかもしれませんから)ですら、この有様ですから、ほかは推して知るべしです。

 

 ある経産省幹部は「これではコア人材が確保できない」と嘆いていました。コア人材とはピカピカの東大法学部の学生のことです。毎年10人程度は確保しないと、組織が維持できないというのです。しかも、追い打ちをかけるように退職者が続出し、この1年間で30人もの退職者が出たそうです。

 

 採用人員が少なく、その一方で退職者が増えるとなると深刻な人材不足を来します。その対策として、経産省では、この春から経産省を一度退職し、また「国家の仕事を希望するOB」を再雇用するとのことです。キャリア(ほかの一般職の職員含め)がいったん退職して、元の職場で再雇用するという人事は極めて珍しいことです。ちなみに財務省では、金融庁に出向した堀本氏が一度、退職して再雇用されましたが、これだけです。

 

 なお、霞が関内で他省庁への転籍という人事は意外とあります。しかし、いったん民間人となって元の職場に戻るということは例外的でした。今回の経産省のOB再雇用は、いわゆるリボルビング・ドア(回転ドア)の人事として注目されるものです。キャリア採用の方針を変えることになるかもしれません。古い言い方になりますが、国家への忠誠というインセンティブが保たれるのか、少し不安になります。

 

 民間企業と官庁との間を行ったり来たりすれば、キャリアたちが不満に思っている処遇改善にもつながります。民間で厚遇され、また戻れば平均所得も上がるというものです。また、民間の現場感覚を行政に持ち込むことの意味は極めて大きいはずです。

 

 ただし、リボルビング・ドアの弊害もあります。ご承知のようにアメリカでは、リボルビング・ドアは常態化していますが、民間との癒着という問題を抱えています。国家機密に人材を民間企業と行き来させることのリスクもまた大きいのです。アメリカでは、1回転どころか、よく2回転、3回転の人事もあります。さて、経産省の取り組みは、今後の主流となるのでしょうか。ほかの省庁でも同様の取り組みを検討しているようです。注目される動きです。