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スルガ銀行は事業持株会社になるか

スルガ銀行は、5月15日に2019年3月期決算、投資用不動産融資に係る全件調査報告書、ノジマ・新生銀行との業務提携合意を公表した。その決算と調査報告書ともに、一層の信用不安を招きかねない内容であった。このまま預金の流出、資産の縮小が続くようであれば、業務提携のレベルでは済まず、資本提携からさらに救済統合のシナリオへと進むことが想定される。その展望は如何に。

◎自己資金の立て替えが発覚

 

 まず、決算内容からみると、この1年間の預金・貸出の縮小が極めて急激なものであったことがわかります。銀行の総資産は4.4兆円から3.3兆円へと1兆円も減少しました。4分の1も減少したのです。基本的には預金の流出によるものです。また、当期純利益は970億円の赤字。その最大の要因となった与信費用は1,370億円(一般貸倒引当金繰入額+不良債権処理額1,103 億円)に上りました。単純にいまの状況が続くのなら、今年また総資産は1兆円減少し、当初の規模からすれば半分になります。これでは預金不足になることは必至。いくら資産を減らそうとしても簡単ではないので、どこかで資金調達に穴が空きます。組織も維持できなくなります。

 

 今後の決算の見通しも決して明るいものではないと思えます。同時に公表された「投資用不動産融資に係る全件調査報告書」には、これまで知られていなかった「自己資金の立て替え疑惑」が指摘されていました。驚きました。その金額は投資用不動産融資1.8兆円の4分の1の4300億円にも上ります。この分、債務者の信用を業者が補完していたことになります。逆に言うと、いまの債務者は信用が不足しているということになります。立て替え分を融資額の10%(通常の自己資金負担比率)として計算すれば、単純計算で430億円分の返済リスクが極めて高いということになります。ただし、報告書を読むと個別の融資案件を精査した結果ではなく、「疑惑」に留まっており、蓋然性が高いという指摘なので、実際のリスクは不明です。

 

 今回の決算では、この「自己資金の立て替え」リスクを反映されているとは考えられません。同日に決算とは別に報告書が出ているからです。今後、反映されると融資だと考えるべきでしょう。この立て替えのリスクを「要管理」(返済条件の緩和)、あるいは「破たん懸念先」として自己査定すれば、引当は膨らみます。また、債務者の保有不動産の時価と購入価格との差額をスルガ銀行は債権放棄に応じると表明しています。今後、債権放棄額がどのような規模になるのか、今期決算では、これも含めて引当は相当膨らむとみるべきだと考えます。

 

◎誰が信用補完するのか

 

 ここまで信用力が低下するとほかの優良な金融機関の信用補完が必要になります。新生銀行との提携は、信用補完が狙いであることは間違いありません。今後、新生銀行がどこまで本気で資本を出すのか、注目されます。それが形作りのような規模であれば、間違いなく市場は失望します。スルガ銀行は、これまでも、横浜銀行、静岡銀行、りそな銀行、SBIグループとの提携を進めていたと報道されています。しかし、それぞれ否定されています。統合相手はいまのところ存在しません。新生銀行のスルガ銀行との提携についての記者会見は「素っ気ないものだった」で、本気でスルガ銀行を救済するつもりはなさそうです。有体に言えば、「金融庁の指導で仕方なく業務提携したのではないかと勘繰りたくなる様子だった」とのことです。

 

 となると、今回、業務提携先に名乗りを上げたノジマが注目されます。ノジマは首都圏を中心にデジタル家電専門店を800店舗展開するだけでなく、傘下に「ニフティ」を有しています。ノジマが楽天のビジネスモデルを追いかけているのは明白です。ノジマにかけているのは金融部門です。ノジマが銀行を傘下に収めることができれば、Eコマースは飛躍的に成長する可能性があります。

 

 やや中期的な見通しになりますが、仮にノジマが親会社、あるいは事業持株会社を設立して、スルガ銀行を傘下に収めれば、ノジマの業務範囲は格段に広がる可能性があります。銀行持株会社は事業持株会社の比べ、業務範囲規制が緩いため、いわばなんでもできる会社になります。金融機関同士の統合というパターンは、いまの低収益環境のなかで取りにくい選択です。本命の業務提携先は金融機関ではないとみています。スルガ銀行ノジマとの業務提携書には「従来型の銀行サービスから、新しい銀行サービスを創り上げる」と明記されているのです。

 

 あの破たんした日本振興銀行を吸収したイオン銀行の総資産はすでにスルガ銀行を上回っています。ネット接続している複合的な企業グループのなかでの金融機関という位置づけがもっともふさわしい形ではないでしょうか。