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地銀の持続可能なビジネスモデルとは何か

金融庁は2月7日、「地域金融機関の経営とガバナンスの向上に資する主要論点(コア・イシュー)」を公表した。その意図は、この論点を金融庁と地域金融機関経営者との「対話」のテーマとし、彼らの持続可能なビジネスモデルの構築を促すというものである。地域金融機関からは、「金融庁から持続可能なビジネスモデルを作れと矢の催促だが、この低金利のなかで、どんなモデルが可能なのか」と半ば開き直りの声も聞こえる。持続可能なビジネスモデルを催促する動きは森前長官時代からのものだが、今回は早期是正措置を改正した上での取り組みだけに、これまで以上の強い圧力がかかる。ビジネスモデルが描けなければ、地域金融機関は合併、業態転換か、あるいは解散の道しか残されない。あるいは別の道があるのか考えてみたい。

 

◎コスト削減戦略の限界

 

 コア・イシューについての地域金融機関の経営者からのコメントはほとんど見かけません。すでに言い尽くされているからでしょう。遠藤長官が長官就任時に掲げた「深度ある対話」も周知されています。対話の成果についての金融庁自身の自己総括は公表されていないものの、継続している以上、成果に確信があるものと推察します。しかし、それが本当に持続的ビジネスモデルの確立につながっているのか、判然としません。

 

 一般的には、持続可能なビジネスモデル対策といえば、まず、経費削減、人件費削減、人員削減、店舗削減といったコスト戦略が中心になります。実際、そうした取り組みは年々徹底されてきています。それでもなお、さらなるビジネスモデルの構築を促すということであれば、その意図するところは解体的なモデルへの転換なのだと思われます。

 

 象徴的な解体的なモデル転換は、いわゆる再編・統合です。これも進んでいます。県を超えた統合も目立ち始めました。金融庁の遠藤長官が最初に口にした「銀行の非上場化」もそのひとつだと思います。単なる上場廃止ということだけでなく、協同組織金融機関への業態転換も意図しているのではないかと思われます。まだ、それぞれ第1号は出ていませんが、上場廃止は東証の上場整理の際に出てくるでしょう。また、信金、信組もいずれ、再編・統合するときの選択肢として現れると考えています(それぞれ収益の外部流出を抑制する手段です)。

 

 ただ、いずれもコスト削減戦略です。縮小均衡戦略です。金融庁は縮小均衡を求めているのでしょうか。ある金融庁幹部は、独禁法の特例法について「そもそも再編・合併は、解ではなく、時間稼ぎに過ぎない。その間にビジネスモデルをどう構築するかが問われている。特例法は、そのために10年間という期間を与えたものだ」と語っていました。つまりコスト削減戦略を取れといっているわけではありません。むしろコスト削減は時間稼ぎに過ぎないと言っています。

 

◎運用業者としての道

 

 では、時間稼ぎではないビジネスモデルとは何でしょうか。まず、過疎化と人口減少が続く限り、店舗の廃止は当然です。お客様のいない店舗は意味がありません。あるいは、単純な窓口業務だけならパートやアルバイト、派遣社員で対応できるでしょう。それでもお客様が来ないのなら、店舗廃止は絶対です。撤退です。お客さまのいない場所でのビジネスはありえません。すでにこうした現象は全国的に広がっています。

 

 問題はコスト削減を終えた、その次の段階です。地域のインフラとして残ろうとしても、いまの銀行業務をコアとしている限り、ビジネスモデルは成立しません。あるとすれば、「お客様から有料で預金を預かる」しかありません。言葉を替えれば、運用者としてビジネスを展開するしかありません。銀行業務の一部だけを担うという考え方です。いわば投資顧問業です。

 

 ここまでは必然でしょう。そして運用者としてのビジネス展開が無理だとすれば、廃業しかありえません。あるいは、ほかの業態への転換です。論理的な帰結と言ってもいいのではないかと思います。

 

 加えて、金融庁が意図しているかどうかは別として、決済の自由化を図っていることも銀行の居場所を狭めています。このインパクトを無視することはできません。

 

◎ファンドとして生き残る

 

 次に、金融機関が別の業態に転換するということは可能でしょうか。地域商社というアイディアがあります。また、不動産業者という選択もあるかもしれません。しかし、いずれにせよ、現有のリソースをそのまま活かすということにはなりません。

 

 小生にアイディアがあるわけではありませんが、投資会社=ファンドになるという選択があるかもしれません。この場合、融資ではなく、出資です。しかし、独禁法の制約があります。この制約を乗り越えるには、銀行であることを止めるか、独禁法の適用除外を求めるしかありません。勿論、銀行免許を返上してファンドになるという道もあります。これならば、独禁法は無関係です。

 

◎コロナ・ショックの追い打ち

 

 以上は、中期的な経営問題ですが、直近の問題への対応も見逃すことはできません。コロナ・ショックは、企業倒産に拍車を掛けます。たとえば、観光関連は、SARS騒ぎをベースにすれば、少なく見ても6~9か月間の急激な売り上げの落ち込みが想定されます。また小売業全体への影響も、これも10%程度の落ち込みは覚悟しなければなりません。小売りの10%は大きな影響です。

 

 このとき、地域金融機関は中小企業を支え切れるでしょうか。NOです。政府保証と公的金融機関の融資がなければ、支えきれないことは、これまでの経験からも自明です。とりわけ疲弊が大きな金融機関、再編でしか生き延びられない金融機関に中小企業は今回のようなコロナ・ショックへの援助を求めることはできません。コロナ・ショックは、期せずして、ビジネスモデルの転換をさらに促進させることになると思われます。