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官邸の側近たちとブレーン

菅内閣が9月16日に正式に発足し、順次官邸人事を進め、10月1日には、広報担当の補佐官を初めて民間現職メディアから決定し、体制が固まった。安倍内閣には側近政治、官邸主導=反霞が関という特色があった。官僚の使い方は一部の人材に偏っていた。菅内閣も同じように側近政治になるかどうか、まだその兆候ははっきりとは確認できない。しかし、その陣容を確認しておくことで、今後の政策の方向性を占う参考となるだろう。官邸大組織のうちの秘書官、補佐官、参与の陣容について多少だがコメントしたい。

 

◎官房長官秘書軍団をそのまま

 

 菅総理の秘書官グループは、次の通りです。事務秘書官が6人、政務秘書官が1人です。

・高羽(たかば)陽氏(外務省H7入省)-官房長官秘書官からスライド

・大沢元一氏(財務省H7)―同上

・門松貴氏(経済産業省H6技官)―同上

・遠藤剛氏(警察庁H7)―同上

・鹿沼均氏(厚生労働省H2)―元菅官房長官秘書官

・増田和夫氏(防衛省S63)―安倍政権からの続投

・新田章文氏(政務担当秘書官)―菅事務所の秘書。続投

 (これに各省庁とも秘書官補をつけています。)

 

 菅総理は官房長官時代に使っていた秘書官4人をそのまま総理秘書官とし、一人続投させました。また、コロナ対策という名目で定員を5人から6人に増員しました。鹿沼氏がその人ですが、皆、すでに部下として使った顔なじみということです。

 

 秘書官はかつて、財務、外務、経産、警察から任命されていましたが、東日本大震災時の自衛隊の活躍を背景に、民主党政権時代に防衛省からも任命され5人体制(防衛省からは現在3代目の秘書官です)となりました。そして今回、初めて厚労省が加わったことになります。

 

 秘書官は、政策助言、政党・各省庁(とりわけ出身省庁)との連絡、首相の国会答弁をチェックします。細かいことから言えば、毎朝、朝一番で新聞・メディア動向をひとまとめにして情報を伝えることから始まり、スケジュールチェック、国内外への出張にも常に同行します。権限が強化された官邸の政策の入口になります。総理にいいアドバイスをすれば、高く評価され、そうでなければ官邸から異動になった後の処遇も冷遇されるということになります。審議官以上の人事を決定する内閣人事局を抱えている官邸ですので、とりわけ身近な人物がそうした高官になるときの評価の信賞必罰は厳しいようです(ここでは書きません)。

 

 事務秘書官は政策のサポートですが、政務秘書官は特別な存在で、首相との面会の決定権を持つ“門番”です。政務秘書官は、政治的な判断が求められます。この人に会ってはいけない、この人に会えば政策の方向が決まるということもあるのです。なお、小生の知人の政務秘書官経験者は、大臣と毎晩、酒を付き合ったと話していました。非常に親密な存在です。安倍前総理の今井秘書官は政務秘書官兼補佐官でした。つまり、門番と政策のヘゲモニーを取るという前例のない異色の方でした。今後もそうした政務秘書官が出てくるかどうか。

 

 彼らは総理執務室の隣にある通称、総理室と呼ばれる部屋に詰めています。なお、この官邸5階のフロアには官房長官室や官房副長官室があり、内閣官房参与などの個室も連なっています。この5階は官邸の心臓部といえるでしょう。なお、各室への往来が新聞記者など外部の人間からはみえないようになっています。反対に総理から参与までは、密室のなかにいるということになります。言い換えますと、密談が可能なグループということになります。

 

 秘書官のなかでとくにお気に入りは、門松氏(慶大理工学部環境情報卒)と言われています。今回の秘書官人事でも最初に内示したのは門松氏でした。経産省の技官ということで、菅官房長官秘書官の前は宇宙産業室長、内閣官房では国家戦略室に在籍していました。産業・技術関連のアドバイスを得意とされるのでしょうが、直近での活躍は、疎遠であった二階幹事長と菅官房長官との間のメッセンジャー役を担ったことと言われています。信頼が厚いエピソードだと思います。

 

 なお、その次に内示がでたのが、財務省の大沢氏、その次が外務省の高羽氏とのことです。もっとも、菅総理は当初より、官房長官秘書官をひとまとめで連れていくとの意向でしたので、この内示の順番は意味がないかもしれません。

 

◎内閣官房参与と総理補佐官

 

 総理の特定テーマについてのブレーンである内閣官房参与は次の通りになりますが、ほとんど再任です。参与は本来総理の参与なのですが、官房長官のブレーンでもあります。菅総理は秘書官と同じ感覚で決めたものと思われます。

 

・飯島勲氏(特命担当)―再任

・平田竹男(文化・スポーツ振興・資源戦略担当)―再任

・木山繁(経済協力・インフラ輸出担当)―再任

・西川公也(農林水産業振興担当)―再任

・今井尚哉(エネルギー政策等担当)―新任

 

 参与は非常勤の国家公務員ということで、みなさん原則として本職を持っていらっしゃいます。今回の組閣にともなう人事では、何と言っても今井氏(安倍総理政務秘書官兼補佐官)の処遇が注目されていました。安倍政権で官邸を牛耳っていたと言われる今井氏は、菅内閣でも残留を希望していたからです。まさかとは思っていたのですが、参与として残留しました。

 

 テーマは、エネルギー政策となっていますが、中身はロシア経済協力がメインとなるようです。安倍政権時代、総括補佐官として官邸外交を指揮したので、トランプ政権とのつながりも残っています。ほかにも特定外交テーマに個人名で交渉してきた方ですので、菅総理としても個人的なリレーションや政策の継続性を考えたものと推測します。

 

 今井氏は第1次安倍内閣のときの総理秘書官(安倍総理の退陣で1年間)、次に河村官房長官秘書官となりました。その後、民主党政権になるわけですが、そのときも官邸残留を希望しましたが、結局、経産省に戻りました。官邸に残ろうとしたということは、それだけ権力志向が強い方なのかもしれません。

 

 ほかの参与の方々は政策の継続性から再任したものと考えられます。ただ、安倍政権では10人いた参与は半減しました。

 

 なお、総理補佐官は次の通りです。特別職の国家公務員です。参与とは異なり、人事は閣議決定事項、内閣法で定員も決められています。

 

・木原 稔(国家安全保障に関する重要政策担当)(衆議院議員)―再任

・阿達 雅志(経済・外交担当)(参議院議員)―新任

・和泉洋人(国土強靱化及び復興等の社会資本整備、地方創生、健康・医療に関する成長戦略並びに科学技術イノベーション政策担当)―再任

・柿崎明二氏(政策の「評価・検証」担当)元共同通信社論説副委員長―新任

 

 ここでの注目点は和泉氏の再任と柿崎氏の新任です。和泉氏はいろいろと週刊誌ネタを提供していましたので、どうかなと思っていました。建設省(国交省)出身で退官されたときは住宅局長です。地方創生の実務を担い、二階幹事長の「国土強靭化構想」の発案者の一人でもあります。仕事師ということでしょうか。柿崎氏の任命の意図は不明です。10月1日付人事ですが、具体的に何をするのか、まだわかりません。

 

 いま、個人的に関心があるテーマがあります。それは、菅総理が自民党総裁選を戦っているとき、地方講演で消費税増税について付言したことです。これには驚きました。いわでもがなのことを話したのですから、驚きます。誰が振り付けたのか。この背景を調べているところです。最初は財務省の矢野主計局長の振り付けかと単純に考えましたが、もしかすると日銀の雨宮副総裁当たりからの発信を経由したものとも考えました(理由は単純です。政府が増税という姿勢を見せないと日銀は国債を買うことができなくなるということです)。ところが、最近、ある人物からほかにいるとの情報を得ました。ミスターX氏は誰かという興味もありますが、X氏を菅総理につないだのは、側近の誰かということも興味深い点です。

 

 ここでハタと気づいたのですが、菅内閣にはこれぞというマクロ経済ブレーンという人物が見当たりません。竹中平蔵氏がブレーンと称しているようですが、自称ブレーンなのか本当のブレーンなのか判然としません。個別の経済政策についてのプロの方々はいらっしゃるのですが、マクロが見えません。マクロが見えないということは、財政・金融政策だけでなく、金融行政も疎くなります。菅総理がやたらと地銀再編を強調されていますが、その波及効果を正確に説明している人物がいるのでしょうか。登場を待つこととしましょう。

 

<2021年1月4日追記>

 1月1日付で政務担当秘書官の新田章文氏が辞職しました。その後任に内閣官房内閣審議官の寺岡光博氏(H3年財務省)を充てました。異例の人事です。寺岡氏がそのまま政務担当を引き継げば、安倍総理時代の実力政務秘書官であった今井尚哉秘書官を彷彿とさせる、霞が関上がりの政務担当となります。年次は新たに厚労省から来た鹿沼均氏(厚生労働省H2)に次ぎますが、おそらく秘書官グループのトップに立つと見られます。

 

 

 寺岡氏は、菅義偉官房長官(当時)の秘書官を務めた経緯があります。略歴は省略しますが、財務省ではエリートコースに乗っている人物です。それだけの人物を官邸に引き寄せたのは、菅総理の本当の側近がいないということを表しています。寺岡氏が積極的に政策に関与していくことが想定されます。


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