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Never die in Tokyo

金融庁は東京金融市場の国際化を進めるための施策を矢継ぎ早に打ち出している。橋本総理の金融ビッグバン構想から始まり、2016年には小池都知事が国際金融都市構想を公表した。しかし、鍵を握っているファンドマネージャーに関する規制と税制がネックとなり、進捗ははかばかしくなかった。香港市場の凋落の機をとらえ、一気に打開したのが、氷見野金融庁。昨年12月、本来はコロナ感染対策である政府の総合経済対策(菅総理としては初の総合経済対策)にどういう理屈付けをしたのか、「世界に開かれた国際金融センターの実現」という項目をすべり込ませ、税制改正、さらにはファンドマネージャーの在留資格要件も緩和するなどの方針があれよあれよという間に決まった。須らく役所の仕事は危機時に大幅に動き出すが、教科書通りの作戦勝ちだろう。ちなみに氷見野長官が関係者を説得するときに使った殺し文句は「Never die in Tokyo」だった。

 

◎外人たちの囁き―東京で死んではならない

 

 東京金融市場を国際化する最大のポイントは、如何に多くの海外からファンドマネージャーを引っ張り込むかにかかっているといっても過言ではありません。ロンドン然り、香港然り、シンガポール然りです。そのファンドマネージャー達が集まるといつも話題になるのが、東京でのライフプランの悩みだそうです。なかでも結構深刻な話題になっていたのが、相続税課税。「Never die in Tokyo」なのだそうです。

 

 なぜ、東京で死んではならないのか。10年間以上、東京で仕事をしているファンドマネージャーが亡くなると、相続税課税対象が日本の資産だけでなく、妻子のいる本国分の資産まで対象となってしまうからです。人によってもちろん違いますが、毎年、何億円も稼いでいるファンドマネージャー達の本国の資産は相当なものでしょう。

 

 海外の相続税負担は概して日本より低い(甘い)のです。たとえば、アメリカでは相続税の基礎控除額は545万ドルもあります。5億円以上も控除できます。イギリスやフランス、ドイツも相続税はありますが、その税率は日本よりも低めです。もっといえば、世界的に相続税率は低下、あるいは廃止の流れにあります。イタリアやカナダ、シンガポール、オーストラリアには相続税はありません。北欧諸国も相続税を廃止しました。中国やインドも相続税がありません。加えて、イギリス、ドイツ、フランスは、相続税制度を廃止する方向で検討が進んでいるようです。

 

 日本では、最大55%の相続税を払うことになります。こりゃ、たまらんというわけです。この話を聞きつけた氷見野長官が、このキャッチーな言葉に飛びついたと聞きました。センスがいい方です。そして、令和3年税制改正(4月1日施行)では、ファンドマネージャー達の相続税は「勤労等のために日本に居住する外国人について、居住期間にかかわらず、国外財産を相続税の課税対象外とする」となりました。アメリカで蓄えてある資産はお構いなしとなったわけです。

 

 さらに、所得税については、いわゆるキャリード・インタレストが、総合課税(累進税率、最高55%。地方税込み)の対象ではなく、「株式譲渡益等」として分離課税(?律20%)の対象となることが明確化されました。

 

 ファンドマネージャーが個人としてファンドに投資して得た利益分配が大きく、この税の扱いが海外と比べ負担が大きいことがファンドマネージャーのやる気を殺ぎ、東京に来ない理由の一つとなっていました。今回の税制改正で香港やシンガポールにほぼひけをとらない税制となりました(シンガポールの所得税率は最大22%)。

 

◎東京に戻れるのかわからない不安

 

 ファンドマネージャーのもうひとつの懸念は、「東京に戻れるかどうかわからない、長く働けるかどうかわからない」という不安です。東京で働き、本国に帰ったファンドマネージャーが再度、東京で働くとき(あるいは短期滞在から長期滞在への切り替えるとき)、本当に在留資格がとれるのかどうか、わからないというのです。

 

 在留資格については明確なルールがあります。ただ、少し言いにくいのですが、入管の現場では裁量が結構、働いているようです。ならば、ルールで優遇し、はっきりと有為な人材は永住権をとれるとすればよいではないか。いろいろと細かいルールなのですが、ざっくり言えば、法務省がガタガタ文句をいうなら、金融庁が有為な人材だと認めてしまえばいいというわけです。

 

 例えば、日本人がアメリカでファンドマネージャーとして働くときの審査基準(グリーンカード)よりも、アメリカ人が日本で働くことの基準のほうが緩くなると思います。香港との比較をしなければなりませんが、香港は簡単に就労ビザが取れますが、期限は1年。更新が必要です。更新はすべて裁量です。でも日本よりも簡単に更新できるようです。しかし・・・香港自体が沈没しかかっていますので、ここで比較しても意味はないでしょう。

 

◎日本橋兜町に金融庁の新オフィイス

 

 東京金融市場の国際化を阻害してきた理由は3つあるといわれています(実際にはもっともっとありますが)。ひとつが税制、二つ目が在留資格、以上2点は解消しつつあります。そして第3は、当局と英語が通じないということです。

 

 金融庁は、この10年ほどの間に職員の英語力強化を進めてきています(森長官時代から加速したように思います)。加えて海外事業者との接点を集約した「拠点開設サポートデスク」を2017年に開設。さらにこの6月から日本橋兜町に新オフィイスを作り直しました。ビジネスの中心に許認可の拠点を置くのですから、至便というべきでしょう。

 

 いま、外国株投信の残高の増加が顕著です。あれだけ海外投資に慎重であった個人が投信というツールで間違いなく。海外の株式投資に突っ込んでいます。その運用を任されているのが、「外人」のファンドマネージャーです。多くのマネージャーが必要になっています。

 

 大英帝国の遺産を引き継いだロンドンには及ばずとも、中国化・国家管理統制が厳しくなり、中国メインランドにいずれ引き渡される香港の金融仲介業を横取りできるのは、シンガポールか東京くらいのものでしょう。シンガポールとの競争に勝つ確率は50%を超えると思います。たとえば、いずれシンガポールの中国系住民も人民元の決済のなかに埋没します。資本市場の自由化も制約されるとみています。その背景には中国の軍事力の増強があります。平和な時代の産物であるシンガポールが安全な金融都市として生き残る確率は下がり始めるはずです。この見方に反対される方は多く、不愉快に感じる方もいらっしゃるかもしれません。ご容赦下さい。

 

 さて、東京金融市場の国際化は、間違いなく国策である「貯蓄から投資」を推進します。この旗を立てている限り、金融庁にとっては錦の御旗。おそらく、これからも、なんでもありありの施策が展開されるはずです。

 


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コメント: 3
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