金融庁、財務省は7月4日、定例の幹部の人事異動を行った。金融庁長官は栗田照久氏(総合政策局長・昭和62年入省)が順当に昇格した。ただ、局長クラスの異動は限定的であり、審議官の異動も少ない静かな人事となった。同様に、財務省も茶谷栄治次官(61年)が留任したため、主に主計局の異動が少なく、また、ほぼ事前に想定された人事となった。同期入省組による同一ポストの使い回しもあり、全体的に停滞感のある人事となった。
<金融庁>
◎金融庁新長官に栗田氏
いまから5年前、2018年の定例人事異動。当時の森長官が退官し、遠藤氏にバトンタッチしたときに、森長官が栗田氏を監督局審議官から監督局長に大抜擢してあっと言わせました。誰も予想していない人事でした。当時、私も金融庁の役所の中にいましたが、情報が駆け巡ったとき、職員の方々が一瞬、表情をこわばらせたのを鮮明に覚えております。意外を通り越した人事でした。
遠藤長官とは栗田氏との間には5年の年次差があり、その間に将来の金融庁長官の有力候補となる監督局長候補者が何人もいました。そのとき、森長官は国家への貢献・実績を評価した実力に見合った人事だと語っていました。年次ではなく、実力で人事を決めるという森長官の思い切った方針でした。森長官と事実上の内閣人事局長であった菅官房長官との太いパイプなくして実現できない人事でした(栗田氏は京都大学卒です。東大閥が幹部を寡占するなかでは異色だったのです)。もしかすると森長官は遠藤長官の後に栗田氏を考えていたのかもしれません。
しかし、実際にはそうならず、人事繰りに窮した金融庁は、栗田監督局長を4年間も続投させることになりました。そして昨年、筆頭局の総合政策局長となり、ようやく晴れて長官です。
栗田長官に対する金融界の評価は、「控えめで話を聞いてくれる」「すぐに動いてくれる」というものです。金融庁(金融監督庁を含め)のなかで、金融行政21年間という史上最長のキャリアの持ち主です。過去の大蔵省・財務省時代の金融行政担当(銀行局・証券局)を含めてことです。自然と金融界に顔が広くなるのは当然といえば当然。歴代長官のなかで金融界に最も知られた長官と言えるのではないでしょうか。
新長官の最優先課題となるのは、予想される金利上昇にともなうプルーデンス問題でしょう。同時に資産バブルの処理という課題も追いかけてきます。
前長官の中島氏は2年の在任。歴代長官は2年から3年というパターンで異動がありましたが、栗田氏の在任期間は1年間ではないかとみております。これまでの金融庁は役所として若いという事情があり、局長も同様に長期在任が目立っていました。
しかし、組織として成熟してきたため、長官(次官)の任期もほかの省庁と同じように1年サイクルとなる可能性があります。次第に下の年次が迫ってきたのです。また、早期に退任する方が少なく天井が低くなったという事情もあります。局長のサイクルも短くなるか、同期回しが増える可能性があります。
栗田氏は1年。次の長官と目される伊藤豊監督局長(平成元年)も1年、その次の石田晋也総括審議官(2年)も1年ということになりそうです。
◎監督局長の留任
今年の局長クラス人事での少し驚いたのは、伊藤監督局長の留任と油布志行証券監視員会事務局長(元年)の総合政策局長への異動です。総合政策局長には伊藤監督局長が回るのではないかと見られていましたので、意外でした。この人事には当然、内閣人事局の意向が反映されているはずです。
古い話ですが、伊藤局長が2020年にあるインサイダー事件に関与した人物と会食して高額のワインを受け取ったという疑念があるというネット記事が昨年、流れました。金融庁は処分しておりませんので、事実関係は否定されています(なお、金融庁の内規で指導を受けた可能性もありますが、これは非公表です)。しかし、どうも栗生官房副長官(内閣人事局長)が難色を示したのではないかという憶測が流れていました。栗生氏は「事実ではなく、メディアの社会面に掲載されたというだけでネガティブな判断をする人」(霞が関)というもっぱらの評判です。まあ、1年間、ほとぼりが冷めるのを待つということだと思います。
油布氏は、SMBC日興證券の処分、地銀と子証券会社の仕組み債販売の処分で実績を挙げています。とくに後者は金商法の適合性原則を適用するもので、証明の難しさから、これまで金融庁がなかなか決断出来ずにいた案件でした。これを中島長官が評価したものと思われます。これまでも事務局長から総合政策局長への異動は普通にありますので違和感はありません。ただ、キャリアからみて企画市場局長に回るのではないかと見ておりました。
また、油布氏の後任局長には、平成3年入省の井上俊剛総合政策局審議官(開示)が抜擢されました。この背景には「PBR1倍」の推進があったのではないかといわれております(確証はありません)。日本の株価をここまで押し上げたきっかけとなったことは間違いなく、官邸が評価したということです。ということでデコボコの力学が働いた結果が今回の入れ替え人事となったとの見方があります。もちろん真相は不明です。
なお、総合政策局長は、職制上、官房とモニタリング(検査)を所掌しますが、実際の業務としては後者にウェートがかかっています。したがって、油布氏の仕事も証券監視委員会の延長線上にあるともいえそうです。官房機能はもっぱら石田総括審議官が引き続き担います。
◎企画市場局の主要課長が金融庁キャリアのポストに
企画市場局は、国会提出した金商法改正(金融経済教育推進機構の創設・四半期報告書の廃止など)が時間切れとなったため、担当の井藤英樹(63年)局長が留任しました。仮に法案が成立したとしても井藤局長留任の線もあったと思われます(ここは油布局長との選択です)。岸田総理の「資産所得の倍増」という大スローガンを起案したのが井藤局長といわれ、官邸の評価が高かったためです。
今年、企画市場局のライン課長が財務省出身キャリアから金融庁採用キャリアになるという事態となりました。新しい動きです。企画局の主要課長である企業開示課長に野崎彰(12年)氏、市場課長に齊藤将彦(12年)氏が就任しました。
開示課長は、行政の対象となる業者が上場の大企業であるため非常の多くの企業との接触が求められます。そこには当然、職権としての行政裁量が働くため金融庁でもっとも権限があるポストと言われています。抜擢です。前任者が廣川斉氏(8年)ですから、年次としても4年若返ったことになります。
また市場課長も、「国内の金融商品市場その他の金融市場に関する制度の企画・立案」という局の中枢ミッションを担います。抜擢です。こちらも前任者は島崎征夫氏(7年)ですから5年の若返りということになります。留任が多い中でこのお二人の昇格人事は目立っています。
金融庁採用のキャリアは、三浦知宏(11年)監督局保険課長、八木瑞枝(11年)監督局証券課長とライン課長に就任しておりますので、今回の人事で合計4つのライン課長ポストを占めることになりました。
今後、財務省のキャリアがこれらのポストに就くことは考えにくく、むしろ金融庁キャリアの課長ポストが増えていくものと思われます。将来的には局長ポストも金融庁キャリアが占めることが想定されます。最終的には金融庁長官も金融庁キャリアが任命されるでしょう(多分)。
国税庁のように財務省の外局であれば、特定の重要ポストを財務省出身者が占めることができますが、金融庁は制度上、財務省とは無関係の独立した組織ですので、次第に金融庁採用の職員によって構成されていくでしょう。財政と金融の分離が金融庁(金融監督庁)発足時のスローガンでしたが、着実に人事によって実現されつつあるといえます。
長銀が破綻したとき、大蔵省と金融監督庁(大蔵省出身者)との間で、国有化の形・方法について激烈なバトルがあり、意見は二分しました。このときは金融監督庁側の言い分が通りました。しかし、結果論ですが公的資金の注入額が大きくなりました。
今後、こうした金融破綻が発生したときに独立した金融庁がどこまで主導権を取ることが出来るのか。そのとき財政・金融の分離の歴史的評価が定まってくるのではないでしょうか。今後、強い権限をもつ財務省との関係をどのように維持していくのか、さらに悩ましくなるはずです。
なお、付け足しのようで恐縮ですが、天谷知子(61年)金融国際審議官が退任したため、金融庁の女性の最高幹部が不在となりました。当分、女性不在が続く見通しです。
<財務省>
◎茶谷次官の留任
このコラムの読者は金融関係者が多いと思いますので、財務省の人事については、ごく簡単に紹介したいと思います。茶谷次官の留任は、防衛予算と少子化対策の財源問題が積み残しとなっているためです。兆円単位の財源が見えない状況では、次官も主計局長も留任せざるを得ないでしょう。両方とも長期の政策であり、赤字国債で賄えるものではありません。また、一時の財源対策では対応できません。へたをするとイギリスのトラス首相のように国債市場を混乱させ、一ヶ月で首相退任といった事態になる可能性があります。
もうひとつは、青木孝徳(元年)官房長の主税局長就任です。官房長の前職は主税局審議官でしたが、主税局では課長経験がありません。課長を経験せずに主税局長となったケースはこれまで数人しかいません。それだけ実務に精通していることが求められているポストかと思います。
青木氏以外に選択があるかと問われれば難しく、本来ならば税のプロの小野氏が適任だったのですが・・仕方のないことでした。
(表は名字のみ。62と63は昭和。それ以外は平成入省年次。FSAは金融庁採用)
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