未来投資会議が6月16日に銀行間手数料(全銀ネット)の引き下げの方向を打ち出した。昨年の秋からの未来投資会議の場で非公式ながら議論となり、先般、4月に公正取引委員会が公表した銀行間手数料調査を受けて、改めて政府としての方針が明確にされた。7月17日に公表される、成長戦略いわゆる骨太の方針に盛り込まれる見込み。全銀ネット手数料の引下げによって銀行振込手数料の引き下げを誘導し、さらにキャッシュレス事業者の全銀ネットへの接続を検討することとしている。1年後にはなんらかの結論が出される情勢となった。この全銀ネット手数料・参加問題の影響について考えたい。
金融庁は2月7日、「地域金融機関の経営とガバナンスの向上に資する主要論点(コア・イシュー)」を公表した。その意図は、この論点を金融庁と地域金融機関経営者との「対話」のテーマとし、彼らの持続可能なビジネスモデルの構築を促すというものである。地域金融機関からは、「金融庁から持続可能なビジネスモデルを作れと矢の催促だが、この低金利のなかで、どんなモデルが可能なのか」と半ば開き直りの声も聞こえる。持続可能なビジネスモデルを催促する動きは森前長官時代からのものだが、今回は早期是正措置を改正した上での取り組みだけに、これまで以上の強い圧力がかかる。ビジネスモデルが描けなければ、地域金融機関は合併、業態転換か、あるいは解散の道しか残されない。あるいは別の道があるのか考えてみたい。
地銀同士の業務提携が進んでいる。従来の提携とは一線を画し、「包括提携」を締結する動きが活発である。包括提携の中身はそれぞれのケースで異なるが、実態は、提携による「競合回避」の色彩が強い。公取の眼をそらすという意図があるのかもしれない。
スルガ銀行は、5月15日に2019年3月期決算、投資用不動産融資に係る全件調査報告書、ノジマ・新生銀行との業務提携合意を公表した。その決算と調査報告書ともに、一層の信用不安を招きかねない内容であった。このまま預金の流出、資産の縮小が続くようであれば、業務提携のレベルでは済まず、資本提携からさらに救済統合のシナリオへと進むことが想定される。その展望は如何に。
政府の郵政民営化推進本部が1月18日開催され、昨年末、郵政民営化委員会が公表した意見書通りに、ゆうちょ銀行の定期性貯金と流動性貯金の預入限度額をそれぞれ1300万円とすることを決定した。合わせると現行限度額の2倍となる。4月1日から実施することとし、関係政令の改正案をパブコメに付した。なぜ、限度額を引き上げる必要があるのか、ゆうちょ銀行、民間銀行、金融庁を含めた当事者の意見を無視した決定にはどんな意味合いがあるのか。
日本郵政は12月19日、米保険会社アフラック・インコーポレーテッドの発行済み株式を2019年中に7%を取得すると公表した。4年後には持ち分が20%となる見込みで、事実上の筆頭株主となる。ブロック取引または市場価格で取得価格は、ブロック取引価格(アフラック保有の金庫株の放出)やアフラックの株価次第だが、総額で2500億円から3000億円程度の規模になる。ただし、公表された内容からは日本郵政にメリットが見えず、アフラック側だけにメリットがあるように見える。なぜ、日本郵政はアフラックの株式を購入するのか。
郵政民営化委員会での通常貯金限度額撤廃の議論がまったく動いていない。6月に一定の方向を出そうとしていたものの、強硬な反対意見が続き、官邸側の調整も効かないまま、延長戦に突入。7月(持ち回り)、8月は委員会も開催されず、9月の委員会でも、日本郵政の決算説明に終始した。10月以降の開催スケジュールについては仮置きされたままで、撤廃論が議題になる雰囲気は全くない。長門社長の官邸詣でも7月まで目立ったが、そのあとはぷっつりと切れている。今年の春の限度額論議は、日本郵政の3年ごとの中期経営計画が公表される時期にあたっていたことから、熱を帯びた経緯があったが、このタイミングを外れた以上、政府としても動きようがなくなっている。加えて、野田聖子総務大臣が10月2日、内閣改造人事において総務大臣から降りたことも限度額論議沈静化の要因となるとみられている。
鳥取銀行が地元鳥取県日南町(鳥取県内陸部の豪雪地帯。人口4300人)の生山支店を撤退し、隣町の日野町・根雨支店と再編統合する方針を明らかにしたことを受け、日南町の町長が撤退への対抗策として、支店から町の預金5億円を引き出すというトラブルが起きた。今後、銀行と日南町は町民預金者の不便さの解消など善後策を引き続き協議するが、撤退は決定済み。支店の撤退について町議会は反対の決議も行っており、地方公共団体が当事者として徹底して反対姿勢を示したのは珍しい。
スルガ銀行がシェアハウス関連融資の問題について事実関係を調査するために設置した第三者委員会が9月7日、その調査報告書を公表した。企業風土の劣化、モラルダウン、規律順守の乱れはすでに新聞報道で報じられているレベルをはるかに上回る深刻な事態であることを明らかにした。内容の詳細は新聞、週刊誌に任せるとして、気付いた点について触れたい。
公正取引委員会は8月24日、傘下に長崎県の親和銀行を有するふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行の経営統合について、排除命令を出さないことを両社に通知し、事実上、了承した。両社の多額の中小企業向け貸出の債権譲渡等を条件とするもので、高いコストを払うことになる統合となった。